来年5月のつくば公演の作品が決まりました。
誰もが小学校の教科書で習う「ごんぎつね」です。
でも、教科書に掲載されているものとは違います。
8月の20周年記念公演の後、次の作品の話になった時、
ひたちなかカンパニーのなっちゃんが、この「ごんぎつね」を提案してくれました。
しかし、登場人物も少ないし、周囲から、「暗いよね。」「悲しいお話だよね。」などと言われたこともあり、さて、どうしたものかと思いながら、10月末、私は仕事の合間に、ごんの故郷、愛知県半田市を訪ねてみました。
そして、ごんが見上げた空を見上げ、ごんが吹かれた風に吹かれてみました。
矢勝川の川べりに腰をおろすと、ごんが、向こうの権現山からトコトコとやって来るような気がしました。
上の写真は矢勝川です。
この川で兵十が鰻をとっていたのでしょうか。
街を歩くと、あちらこちらにごんがいて、ごんは作者である新美南吉と共に、この街の人々に深く愛されていることを感じました。
南吉の墓に参ってから、「新美南吉記念館」を訪ねました。
ここで、南吉直筆のごんぎつねの原稿を目にしました。
ノートの開かれたページには、何と、
兵十に火縄銃で撃たれた「ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。」ではなく、「権狐は、ぐったりなったまま、うれしくなりました。」と綴られていました。
なっちゃんに聞いた通りでした!!
教科書に掲載されているもの(鈴木三重吉が書きなおしたもの)と、南吉のオリジナル版は、随所に違いがあり、クリエの舞台は、オリジナル版に基づいて書くことにしました。
暗く悲しいお話ではなく、また、贖罪のものがたりでもなく、私なりに感じた「南吉がごんを通して描きたかったもの」を書きたいと思いました。
南吉の生い立ちや、他の作品も参考にし、クリエ版、そしてミュージカル版「ごんぎつね」を書きました。
毎日、栗やきのこや薪を兵十に届けるごん。その心の中には何が充ちていたのでしょう。
みなさんお楽しみに。