「銀河鉄道の夜」を書いた宮沢賢治さんは、クラシック音楽が大好きで、自身もチェロを弾いたそうです。
記念館にそのチェロが残されています。
「セロ弾きのゴーシュ」は街の映画館でチェロを弾くゴーシュのお話ですが、「銀河鉄道の夜」にも、残された原稿に”チェロのような声”が出て来ます。
今回は、チェリストの畑江寿利さんに、劇場でもチェロを弾いて戴きます。
先日、CD作成のために、チェロを録音しました。
男性がヴォカリーズ(アやオなどの母音)で歌っているような”声のようなチェロ”でした。
柔らかく、艶と深みが心の隅々まで沁みて行きます。ピッチもテンポも微調整がきく所もアナログならではの素晴らしさです。クレッシェンド、デクレッシェンド、ビブラートの幅などももちろんです。心の中に熱く押し寄せるもの、静かに流れるもの、様々な感情が音になっていく感じも、アナログならではのものです。
録音終了後、作曲家の金ちゃんのピアノと合わせました。
聴いていた、ひたちなかメンバーの高校生たちが、「聴いていたら涙が出そうになっちゃった」と。
合宿所で、この原稿を書いています。
先日録音した「星めぐりの歌」のチェロが流れています。
賢治さんが自ら作詞作曲した歌です。
ふと、思いました。
賢治さんは、チェロでこれを弾いたのだろうか?
優しく深い音色で。
「農民芸術概論」の中で、彼は、これからは農民も農業の合間に芸術に親しんでいくべきというようなことを書いています。
柔らかいチェロの音色を耳に、色々と考えてしまいます。
本当の豊かさとは何なのでしょうか?本当の幸せとは何なのでしょうか?
「チェロは、祈りの楽器」という言葉を聞いたことがあります。
世界中の人々が、平和で、心豊かで、生きていることが「幸せ」であると、思える日が来ることを祈らずにはいられません。
この作品を、是非、感受性が豊かな若い世代に観てもらいたい、そして、心の奥で感じたり、深く考えることの大切さを少しでも感じて欲しいと、あらためて思いました。