星の王子さま M1

クリエの作品には、M1と呼ばれるものがあります。
Music1の意味です。1曲目ですね。
このM1は、作品のテーマ曲と言ったら良いでしょうか。
オープニングとエンディングに歌われます。

さて、「星の王子さま」ですが、M1誕生までに、紆余曲折がありました。
第1稿の台本が上がったのが、一昨年の暮れ。
その時は、M1は空白のままでした。
どんなオープニングにしようかと、決め切れていなかったからです。
演出家に、第1稿の台本を読んでもらうと、本編の中身が余りにも濃く、
「う~~~~~ん・・・・M1は無し」と言われました。
M2から始めようと。

その後、やっぱりM1はあった方が良いということで、書き直す事になりました。
昨年のお正月休み中です。追い込まれたお正月でした。
お正月の3が日に書き上げないと、5月の公演までに間に合わないのです。
やっと、3日の夜、「空へ」という、飛行士としてのサン=テグジュペリの、空への思いを書いたものが上がりました。

1月4日に改訂版第4稿として残された台本には、このタイトルのみが記されていて、詞は、削除されています。

王子さまが、飛行士との別れの前に歌うナンバーM17が、作曲家の金ちゃんから上がって来たのを聴いて、演出家から、これをM1として、みんなで歌おうという案が出されたためです。

M17は、王子さまが、花への想い、井戸への想いと、今から現実になるであろう飛行士との別れについて歌うのですが、これを、舞台に上がるメンバー全員が、自分の大切なものとして歌うことで、一番自然に成立するという判断でした。
そして、私たち一人一人が、夜、星を見て、自分にとって大切なものを問い、それを教えてくれた、王子さまとサン=テグジュペリがいる遠い星を想い、自らの心を震わせることが出来たなら、お客様の心にも、大切なものをお届け出来るとの思いだったと思うのです。

先週末の通し稽古での最後のM1、大学生の役者たちは、それぞれ、凄い表情をしていました。自らの心に、深く感じるものがあったのでしょう。
間奏の音に乗って、多感な彼女たちが舞い、衣裳がふわりと舞うのを見て、こちらの心も熱くなっていきました。
大切な人との出会いは、意味のある素晴らしいことですね。死や永遠の別れもまた、意味があるはずですね。

飛行士は、王子さまとの出会いと別れを、誰かに話せる様になるのに、6年を要したと、物語の中で語っています。
サン=テグジュペリが、このものがたりを捧げたレオンヴェルトは、どの様に、サン=テグジュペリとの別れを捉え、この物語から何を感じたのかと想像しながら、通し稽古を見ました。